随筆・ザの人

じんこつっ!

吉田さんと二見さんと星乃さんでできています。

Category:執筆
この随筆は、新しい「ザの人」にて絶賛新連載中です。
随筆の続きはこちら

08/11/13(Thu)

Category:執筆

ファンタジー

ctime: 08/11/13(Thu) 4:34
ああ、ファンタジー小説書いてみたいなあって、なぜかちょっと思った。
いろんな制約とっぱらって、中学生の頃みたいに、好きなように書いてみようかなあと思った。
今だったら西洋古典の知識とクラシカルな文体で書ける気がする。実は私が西洋古典を学んだのには、ファンタジー小説を書きたかったからという理由もあった。長らく忘れていたけどね。

思い出すなあ。
1200字詰めのPPC用紙にすさまじい字で数百枚と延々書いていったことを……
もしかしたらまだ残っているかもしれない。
その物語の主人公の一人が、魔剣に導かれて数千年の間戦い続けてきた女剣士マケリス。
なぜか彼女の設定だけは妙に覚えている。そして今振り返れば、この名前は適当につけたつもりだったけど、古典ギリシア語のマケーとは「戦」だから、あながち適当な名前でもないんだな。

08/09/17(Wed)

Category:執筆

一時間で書いてみた:「微笑みの帝国」

ctime: 08/09/17(Wed) 23:20
「微笑みの帝国」というタイトルで、短編(よりも短いか)小説をちょこっと書いてみた。
mixiに先に上げたけど、こっちにも上げてみよう。気になるところを少し直したが、ベースは一緒。

---

 歪んだ街を、彼は歩いた。奇妙に無色な行列をくぐり、同胞を横目で見て、ケーブルとICの間を逃げていった。群衆は一方向に、かつ無目的に都市を消費していた。しかしヨサンは、欲望に心動かされることなく、薄汚いアスファルトを踏み越えた。
 彼は古くさいビルの向こうに墓銘碑を見ていた。碑文の文字は読めず、上から板張りの「経済大国」という文字があった。
 墓の側面を白いペンキが塗りつぶし、さらにその上に、真っ赤な文字で革命と書いてある。足下には「ブッシュの戦争反対」というビラが撒かれていた。裏面には銃弾と焦げた跡があって、本を窓辺で読む女の姿が、戯れに彫られている。ヨサンには、それらがすべて、秋葉原と同じフィギュアと等価であった。精液をかけるもよし、燃やしてもよし、気に入らなければ売ればよい。どこかの馬鹿が、それを買う。何の感情もこもらない。
 彼にとって大事なのは、それらの表層ではない。すべては表象にすぎなかった。まるでポルターガイストを探るように、ヨサンはみんな明かすつもりでここに来た。墓銘碑を削り墓石を倒せば、中から菊と竹槍が出てくると信じていたのである。
 政治家たちの自己保身は、決して私利私欲のためではない。彼が読んだ歴史書の中には、そのように思わせる部分があった。だからこそ、彼はその真実を探りに来た。

 さて、この男が見ていたものを、私は、先に、読者諸君に示すことができる。ただし私には、この形容が正しいという保証はできない。
 「微笑みの帝国」である。
 この言葉だけが、彼のメモに書いてあった。その意図は想像するしかないが、ともかく彼の言葉を分析すべきである。
 「微笑みの帝国」なるものの実はと言えば、なんでもない。岩が何かの姿に見えるように、帝国の掲げる槍や殺戮の血糊が、たまたま栄光と平和に見えてしまうのである。ヨサンにはその幻想が見えなかった。王様は裸であった。誰もが空気を読んでいる。空気が暑苦しくて我慢ならず、彼は服を脱ぎ、裸になろうと試みた。石のように白い乳首、絶望がのぞく腹、ミミズのように屈服した陰茎、さらした姿は何にもならなかった。風呂で脱げば誰もがかくのごとく、日本男児の裸と何ら違うことなく、その心をのぞき込む眼鏡を持つ者は誰もいない。安穏と、アンチ=アキヒトを叫ぶことができた。裸でも、そうなのである。
 変人と呼ばれることもなかった。右翼から罵られることさえなかった。仲間と認める者もおらず、敵と見なす狂信者もおらず、日蓮宗は敵を見間違う。平和主義とはその通りであった。
 帝国のマスクはあまりにも美しく、それが化粧なのか、それともただの石像なのか、誰一人知らなかった。ヨサンはそれを、民族主義者のポーズと見ていた。隙あらば銃剣を振りかざし、隣人をにらみつける余力が残っていると信じていたのである。それを見ようと彼は、日本を生きることにした。

 彼は坂を静かに登った。
 斜め下を騒音が通り過ぎる。オレンジの列車が次々と、日本人を吐き出していった。生首を槍に突き刺すように幕府の中枢を突き抜けたひとつの線路は、かつては田舎者を運び、今やサラリーマンを運んでいる。そして、彼らは道を忘れたのであろう。公共交通機関というものを、彼らは上や下に置きたがり、同じ列に眺めようとはしなかった。
 小さな店舗が反対車線側に見える。人気はない。麻雀という言葉は、来し方のパチンコに比べれば重く響いた。儒教の教えも、今や紙くずである。誰もが尊ぶ病院も、若者の喧噪にかすんだ。

08/04/08(Tue)

Category:執筆

一日ずっと

ctime: 08/04/08(Tue) 23:57
今日はずっと小説を書いていた。

一応一区切りつけたんだけど、4400文字といったところか。
ここまででも、私としてはそれなりに片付いてしまっている。本当はもう2000文字くらい加えてオチまでつけようと思ったけど、入れなくても問題はないような気がする。
すごく迷っている。

いつも通りに一人称の文体なんだけど、今回は一人称らしさをごっそり削った。地の文に、「私」という言葉を一文字も入れていない。
意識的にやったのだ。書いていない後半部では、この一人称について言及しようと思ったのだけど、小説の中でそこまで明かしてしまっては、どうもつまらないような気がするのだ。

まあ、会話文の中に相変わらずネタ臭がするのは、どうでもいい。本当に問題なのは、疎外感だ。
主人公の空虚さと疎外感だけは、現状でもそこそこうまく描けているはず。

とりあえず、まずはmixiにうpしてみようか。
そして、あとから後編をつけたしてみよう。

08/03/22(Sat)

Category:執筆

ctime: 08/03/22(Sat) 23:26
青空の下 傘が開いて
涙が一つ落ちました きれいでしょう
やがては溶けて 消える心を
産み落としました この世に一度

わたしの知らない 思い出に
しずくはこぼれて 染みを作るわ
雨でも降れば 忘れるでしょう

わたしの顔に ついていますか
悲しみの白い色 好きの言葉は
あなたもいつか 聴いたはず
白鳥の歌を 最後に一度

炎は燃えて すべてを焦がす
絶望を灰に 涙を油に 好きを煙に
誰もいないところに こぼれるでしょう
青空がみんな かき消してゆく

08/03/01(Sat)

Category:執筆

「ツンと睨んですぐデレる(仮」

ctime: 08/03/01(Sat) 0:20
結局ケータイ小説を書き始めてしまった。

内容はもう決まっている。
ある意味定番の、運命の人と出会って、仲良くなって、一緒にピンチを乗り越えて、愛し合って、だけど運命の人は死んでしまうという流れをそのまま踏襲。
とにかくやってみることが前提なので、読んだことのある小説の設定を、あらゆるところでパクる。大切なのは設定よりも、個々のシーンをどう描けるか、だ。

ただし主人公は男性。
これがネックだが、まあとにかく実体験を建前とするケータイ小説なのだから、これでやってみるしかないのだ。

08/02/07(Thu)

Category:執筆

gigantomachia

ctime: 08/02/07(Thu) 3:00
http://37755.hito.thebbs.jp/one/1201976812
から。
修正点があったらあとで消すかも。
---
 男は、これが最後だと決めていた。
 ここで死ぬからというだけではない。彼は、この時代には必要とされなくなりつつある、古くさい人間だったからだ。
 彼は変わるということを知らない。ところが世界は常に変わりゆくものだから、自らも変わらざるを得なくなる。その結果として、彼は道を外してしまった。絶対に勝つはずのない軍隊に身を投じ、絶対に勝ち目のない武器で戦い、絶対に生き残れない戦場に、こうして踏みとどまっている。
 すべてを押し流す世界の波に抗して、両足をしっかり大地に繋ぐ。彼が最後に選んだのは、運命の防波堤となることだった。

「機械部隊だ!」
 見張り台から、若者が叫んだ。兵士たちにできることは、ほとんど限られていた。
 指揮車のモニターには三次元の配置図が描かれている。機械部隊の射程距離を表す球形が、揺らぎながら彼らに迫っている。1500メートルの射程距離は執行猶予そのもので、一歩でも誰かが立ち入れば、消し飛んでしまう。これまで機械部隊と戦ってきた兵士は多いが、帰ってきた人間は数人でしかない。彼らは、一人残らず戦闘前に脱走し、幸運か不幸か、すぐさま捕縛された人間ばかりだ。もちろん、逃亡者はこの数十倍もいたはずだ。
 最後の戦場において数十人の兵士たちを包んだ、この感情を、絶望というにはあまりに陳腐だろう。詩人の言葉があれば、私はこれをうまく伝えられようが、私にはそれがない。ただ、記憶と事実、回想を繰り返すのみである。
 兵士たちは武器を取ったが、射程においても精度においても破壊力においても、機械部隊には遠く及ばなかった。旧世紀の実弾砲台、残骸から回収したビーム砲を据え付けたもの、同様にスクラップから掘り出した対空砲台、廃墟の中に隠した、たった三台の機動兵器。我々が何よりも信頼しているのは、周囲200メートルに配置した地雷と、施設全体に張り巡らせた爆弾である。
 乙女の名を取った殺人機械は、人類が使ってきたほとんどの武器をかき消す楯を持ち、人を殺すには十分すぎるほどのビーム砲を持ち、人類が永遠に手に入れられなかった、正確さと冷酷さを持っている。それは人類によって作られながら、人類を遙かに凌駕していた。それは人類によって使われながら、すでに人類を見下しつつあった。我々は真っ先にそれの無意味さと凶暴性に気づき、無謀と知りつつ武器を取った。
 それから一年が経ったのだ。我々反乱軍は、緒戦から今に至るまで、ただの一度も、機械部隊の一台も、自分たちで倒したことがない。すべてが、地雷と爆薬の成果である。我々は機械と戦おうとして、ついに地雷の囮に成り下がったのだ。しかも、自ら望んでのことである。
 赤毛のルフスは、兵士たちに指示を与えていた。
「三番壕はクラウディウス、対空砲はリキニウスだ! しっかり見てろ、ヘルメイアース!」
 見張り台の若者、ヘルメイアースは電子双眼鏡をさらにズームさせた。旧市街のデパート周辺に陣取る、十五台の機械部隊。単眼の頭部はまっすぐにこちらをにらんでいる。
「1800メートル、前進中!」
「ニースス、上空は!?」

08/02/01(Fri)

Category:執筆

アイのバクダン

ctime: 08/02/01(Fri) 23:03
【絵志集合】スト−リー募集【合作物語】
にインスパイアされて、小説なんて書いてみた。
タイトルは「アイのバクダン」。
---

 謝礼は前払いだった。一万五千円なんて、破格の金額。電話で申し込んだら三日後に来るように言われ、翌日には銀行に振り込まれていた。こうなるとドタキャンするわけにもいかず、今更断るにも恐ろしくて、わたしは一時間も早く、待ち合わせ場所に着いていた。
 午後四時五十七分に携帯電話のアラームを鳴らすのがわたしで、午後四時五十八分にジョンレノンの着うたを鳴らすのが、待ち合わせ相手。わたしは一言もしゃべらされることなく、茶髪の女の後をついて行った。

「電車でばらまけ」
 ビルの一室に案内されてから最初にしゃべったのは、彼女が開いて左手に持ったノートパソコンだった。同時に彼女は、右のポケットから小さなビンを取り出して、わたしに渡す。
「……これって……」
 目をこらして中を見ても、何かが入っている様子はない。ビンのむこうにあるのは、ガラスが屈折させた周囲の姿だけ。女はわたしの掌に、それをギュッと握らせた。
「絶対に開けるな。午後五時四十五分、品川と××の間で、壁か床にぶつけて割れ」
 この声もパソコンからだ。とても冷たい声だけど、人間の声だとかろうじてわかった。女はひとこともしゃべらなかった。視線はわたしと、一度も合わなかった。
「今から二十分後の東海道線に乗れば、十七分で着く。すべて聞き終わったら今すぐ出発しろ。これは同時多発的に実行されている。品川からは車内で四個、渋谷も四個、新宿は駅内に三個と車内に四個、東京には……」
 わたしは今、何か恐ろしい計画を聞いている。それどころか、わたしはこの手で、何か嫌なことをするのだ。だから一万五千円なのだ。だから命令口調なのだ。体中の血の気が引いて、コートを着ていても足下から寒気がやってきて、鞄を持つ左手が震えた。
「ま、……待ってよ!」
「六本木、大井町、上野などは後日だ。失敗すればお前と我々だけでなく……」
 彼は、無視した。一万五千円以上は、もうわたしにくれないのだ。そしてわたしは、今となっては、そのお金を自分で使うことができない。一円も手を付けなくてよかったと、今になってそんなことが頭をよぎる。だけど、お金を返しますから私を帰してくださいなんて言ったところで、コンピューターと女は知らんぷりするのだろう。どのみちお金を引き出す前に、わたしはどこかに連れ込まれてしまっている。
 わたしは、一万五千円で、大切なものを捨ててしまった。
 話はまだ続いているが、もう聞く気も起きなかった。これ以上知ったところで、わたしには意味がないし、警察に駆け込むような希望もない。ここは駅に直結している。女はついてくるだろう。いや、それでも……

08/01/22(Tue)

Category:執筆

すごろくラブゲーム

ctime: 08/01/22(Tue) 14:04
サイコロを転がして あなたが来るのを待つの
出た目の数できっと あなたはもっと速く来るから

三を振ったら一回休み いやなマスにはまったね
誰かがあなたを抜かしていって 私の前に現れたら……

拒否権はないから 絶対に 迎えに来てよね
走りすぎても 手前で止まっても あがりには届かないから
賞品でも ご褒美でも どんな名前でもいい
一番に たどりついてほしいのよ

二マス進めばゴール 階段の前に 控えてる
だけどあなたは踏み出して 私をかすめてまた逆戻り
今度はあいつが一回休み だからまだだいじょうぶ
一マスだけ進んでね それであがりだよ

運命のすごろく 邪魔するカードを配るのだあれ?
進めば進むほど どうしてあなたは戻ってゆくの?

スタートとゴールが わたしたち 閉じこめたから
振り返っても 突き進んでも 待ってる答えはひとつだけ

07/12/24(Mon)

Category:執筆

短編: irae christi (後編)

ctime: 07/12/24(Mon) 14:02
前編
短編: irae christi
---

「そうよね、そうだよね!」
 自分に納得させているような、妙に急いた口ぶりだった。しかしその瞬間が過ぎると、とたんに落ち着きを取り戻した。それどころか、まるで仮面でもかぶっているかのように、彼女のあらゆる色が消えていった。愛情も、幸せも、怒りも、涙も、何も見えなくなった。
 それでも声色だけは取り繕っていた。クリスマスにはしゃぐ女の子らしさが、不自然にならない程度に、大人っぽさをまとって、ぼんやりと聞こえた。
「今日はね、プレゼントを持ってきたんだ。きっと潤なら、喜んでくれると思って」
 ケーキの箱を開いた。イチゴはない。
「チーズケーキだよ。甘いものばかりじゃ、ダメだよね」
 高校三年生の頃、母がケーキを買ってきたことがある。受験を控えて毎日勉強していたのに、なぜかこの日だけは、親にも勉強しろと言われなかったし、俺も乗り気ではなかった。その時は俺も、クリスマスの熱病に浮かれていた。あのケーキはとても甘かった。
 今の俺は、甘くないケーキを六分割している。二人の時間に対しては、分相応に小さい。しかし二人の気持ちに対しては、異様に大きかった。
「……ん、おいしいな」
 おいしいが、それ以上ではない。俺の心から、危惧をそらすことはない。シャンパンを合わせても、化学反応はない。
「でしょ? 駅をふらついてたら、売ってたんだ。ほら、クリスマスケーキって売れ残ると大変っていうでしょ? だから、値引いてもらったの。こうやってケーキをおおっぴらに食べられるのも、今年は今日が最後だもんね。大晦日は年越しそばだし……」
「俺の誕生日は大晦日だ、知ってるだろ」
 俺はついに、このパンドラの箱を開いた。もしもこんな風に口を挟まなければ、俺はもっと幸せでいられただろうか。彼女は、自分の行動に後悔しながらここにやってきたんだと思う。あのケーキは、賄賂だ。
 賄賂なら、もう少し甘いケーキにしておくべきだったのだ。俺の考えを打ち消すかのように、髪をふるわせて、首を横に振った。
「……ごめんね、わたし、大晦日には予定ができちゃったの。ママじゃない人と」
 語る言葉とは裏腹に、うつむきつつ、安堵の表情が見えた。
「明日から、また忙しくなって、年末はギリギリまで残業。今年あなたと会えるのは、今日だけだよ、今だけだよ」

07/12/23(Sun)

Category:執筆

できた

ctime: 07/12/23(Sun) 18:07
さっき書いた短編の後編を書き終わった。とりあえず明日にはアップロードしよう。
「書簡体」というやつを、初めて試してみた。真剣にやるなら往復書簡でやってみたいけど。

どういうわけか、ドストエフスキーみたいな言葉が並んだ気がする。当事者にしか通じないような論理の飛躍が、何度か出てくる。
クリスマスの物語なのに、クリスマスらしくない展開。メリークルシミマス、ってやつだ。
Category:執筆

短編: irae christi

ctime: 07/12/23(Sun) 11:56
 俺はこの日が嫌いだ。誰が何と言おうと、クリスマスが嫌いだ。
 理由もなく浮かれて、理由もなくケーキだのチキンだのが売れて、理由もなくみんな同じようなことをする。無理に理由を尋ねれば「クリスマスだから」とみんなが答える。誰も何も疑わない。
 いいか、今日は、十二番目の月、二十五番目の日、それだけだ。今日は平日だ。平日より休日が楽しいなら、昨日やおとといに戻ればいい。いつもと同じで仕事三昧の今日が、どの一日より楽しいなら、同じことをもっと前からやればいい。帰りにいつもケーキを買って、甘さに震えていればいい。
 なぜ今日なんだ? なぜ、今日に限って恋人がいちゃつくんだ? そしてなぜ、去年の俺は恋人をなくした?

 雪も降らないのに、あいつはモコモコしたコートで、部屋まで乗り込んできた。右手にはケーキ、左手には紙袋。なぜだか上着を脱がなかった。
「ほら、シャンパン持ってきたよ」
 妙な長い瓶。あっけにとられる俺を尻目に、いきなり振って、パンと飛ばした。コルクは跳ね返り、開いていた辞書の上にポトリと落ちた。いくらかしずくが飛んだ。あわてて彼女はグラスをひとつ取ってくる。俺の家にたったひとつの、しゃれたワイングラス。俺の分は、置いてあった湯飲みに入れた。
 不格好な形でグラスを合わせる。鈍い音がひとつ鳴った。
「ねえ、今日は何してた?」
「読書だよ、もうすぐ読み終わりそうだったからな」
 俺は聞かない。由衣は無理してこの時間にやってきたのだ。午後の七時に来るなんて考えられなかった。だから俺は油断していた。今から思えば、彼女は奇襲を意図してやってきたのだった。
 読みかけの本を取り上げて、しおりをはさむ。そして枕元に積み上げた。三冊目だ。
「いつもと同じだね」
「昨日は外出したんだぜ。雨が降るなんて思わなかったけどな」
 はは、と笑う。指を差した先には、新しく買った傘。思った通り、その年はもう使わなかった。
 シャンパンは不思議な味がした。
「わたしは逆に、家にいたよ。大切な日だからね」
 彼女はなぜか、自分の言葉に自分で仰天したらしい。俺にも分かった。由衣は無理して、グラスに口を付けた。
 今から思えば、彼女はここからずっと、目をそらしていた。俺がそれには気づかなかったのは、この時は不思議と浮かれていたからだ。
「ママが遊びに来たの。結婚適齢期なんだから、いつこんなことができなくなるかわからないじゃない、だって。おかしいよね、あたしってばママのせいで外出できなくなっちゃってさ、……昨日はイブだったのにね」
 イブは、初めての女だ。肋骨から生まれたから、アダムの下にいる。男から女を作ったのだから、クリスマスからクリスマスイブが生まれたわけだ。それならなぜ、男の日の前に女の日が来るのだろう?
 ……なるほど、この世界は完璧に仕組まれている。だから十月に生まれる子供の数が多いわけだ。いよいよ、すべてがわかった。
「でも、今日はクリスマス。それでいいと思うよ」
 俺は笑った。初めて自分で、顔を作った。

07/12/22(Sat)

Category:執筆

つぶやき

ctime: 07/12/22(Sat) 0:58
「分かってるもん、あんたがそう言い出したら、もう止められないって。
だから、……いいよ、やりなよ」

「その先は知らないよ? だけど、あんたは悪いことしてない」

「やりたいようにやってるんでしょ? 好きだよ、それ」

07/12/18(Tue)

Category:執筆

ケータイ小説

ctime: 07/12/18(Tue) 23:05
……いっそのことケータイ小説書いてみようか。

メモ
http://ip.tosp.co.jp/p.asp?I=MAHOBOOK
読んでみよう。
Category:執筆

上原あずみ風:Trust

ctime: 07/12/18(Tue) 14:08
君の瞳に何が見えるの 僕はそれすらわからない
僕のどこを見つめているの 僕はそれすらわからない

だけれどひとつだけなら 僕にだってわかるんだ
僕には君が分からない 君には僕が分からない

わかると言ってくれた君 僕にはそれが分からない
僕が知らない僕のこと 君がそれすら知っているなら

僕のことを僕は知らない みんなが僕に教えてくれる
君の言葉で僕は気づいて 僕は僕を築いていくんだ

君のことが好きだって 僕はいつしかそう思う
誰かが僕にささやいた お前はあいつが好きだろと

思う僕はそこにはいない だけど信じてみたいんだ
誰かが僕をそう見るならば 僕は恋しているだろと

07/11/28(Wed)

Category:執筆

Mirror Doll(カガミニンギョウ)

ctime: 07/11/28(Wed) 0:30
大好きよ ねえ 聞いているよね
そう信じて ねえ 私は歌った
夢の中 静かに泳いで
知らないところに 迷ってしまった

あなたを鏡の中 閉じこめちゃった
つなぐその手を 冷たくしたの
右向けばひだり 隠れてみたり
あの角曲がり 振り向かないで

音符が踊る 目をこらしても
ピアノの音は 今聞こえない
音はあふれて 悲しみ触れて
揺れる五線譜 もう歌えない

長い 長い 巻き付く蔓が心をしばり
髪も 爪も 切り裂くような刃が見えた

羽ばたきを もう 私は忘れた
足下に いま 潮が満ちてく
夢の中 静かに泳いで

07/09/10(Mon)

Category:執筆

メモ

ctime: 07/09/10(Mon) 2:49
主人公は、いつも追われる。
では、なぜ主人公は誰かを追いかけることができない?

ラノベで「追われる」展開は想像が付く。
しかし「追う」展開のイメージがどうしてもわかないんだ。

これに象徴されるように、ラノベは受動的なのかな。
トラブルに対してなんとかして平穏な暮らしを保とうとする、というのがラノベの基本的方向なのかな。
成長物語にしても結構力押しだったり、強引な理由付けがあったりする。自分の自由意志でどうにかしようっていう物語とは、ちょっと違う気がする。

06/12/01(Fri)

Category:執筆

雪虫

ctime: 06/12/01(Fri) 22:54
「ほんっと好きだよなー、お前ってばさ」
 背中に呆れ声を受ける。気にしないで、あたしは空を見上げた。どこかふわふわした青い空。日差しが、頬だけをやんわりあたためる。
 振り向くと、あたしとあいつの間にも、小さな妖精がひらひらしてた。
「だって、雪虫だよ!? 分かってる、あんた!?」
「んなこと言ってもなあ」
 風がますます寒くなると、やがて雪虫がやってくる。春に綿毛が舞うように、秋の終わりに舞い始める。綿毛みたいにはくっつかないし、手でもなかなか捕まらない。あたしはそれでも、見るごとついつい手を伸ばして、そのたびに逃げられてしまう。
 今だって、何度も空振り。六度目でうまくいったと思うと、小指のほうからひらりと去ってしまった。
「あー、もうちょっとだったのにー……」
 手のひらはまっさらだ。まさに影も形もない。何度もやってたから、ちょっと赤くなっちゃったけど。
「お前にゃ無理だよ」
「ゆーたなら、できる?」
 少し首をひねってから、嘘くさそーにうなづいた。
「知ってるだろ、俺がスズメを捕まえたの」
 そうなのだ。ヒロが言うには、こいつは高校の柵に止まっていたスズメを両手で捕まえてしまったらしい。こっそり後ろから忍び寄って、サッと伸ばしてあっさりとやってしまったそうだ。見ていた人は他にもいた。後輩のアカネとカオリは校舎の窓から偶然、掃除中にアヤカが、ヒロといっしょにゆーたについていたカオルが。これだけ証人がいれば、ああ、そうなんだと納得するしかない。
 実際ゆーたなら、そんなこともやりかねないのだ。授業中に脱臼してもヘラヘラしてるし、職業体験では幼稚園児がわらわらと寄ってきた。オーラなんて言うと安っぽいけど、そこらへんの男とは少し違うのは確か。
 どうしてあたしとゆーたがこうなったのか、すっかり忘れてしまった。昔からの友達みたいに、二ヶ月間をふたりで過ごしてきた。
 まあ、それでいいと思う。何もかもが鮮やかすぎると、時々恥ずかしくなっちゃうと思うから。いつか、あたしが全く変わってしまった時に、あそこに行くとあいつを思い出すなんてこと、したくない。立つ鳥跡を濁さず、ってやつだ。
 あたしが、立つことになるんだろうか。
 捕まえられない雪虫みたいに、ひらりひらりと振り切って、雪に紛れて途端に姿を消してしまう。
 それもいいかもな、って思った。
「……ほら、やったぞ!」

06/11/11(Sat)

Category:執筆

Vita

ctime: 06/11/11(Sat) 2:42
たった一言足りないままで あたしは空に駆け出した
世界に後悔残したままで 夜の屋上 君にさよなら
痛かったよ 苦しかったよ 悲しかったよ 楽しかったよ

君のことなら信じてたから 今では未練もなくなった
ママの背丈も追い越して 君は誰か 大切な人を
見ているよ 聞いているよ そばにいるよ 抱きしめたいよ

生きるってこと悪くはないよ あたしはなくしてきたからね
さまよってさまよって 空見上げ その頃にはわかるからね
太陽が愛しくなる頃に


哲学者は本に向かって 世界の全てを探してる
サラリーマンはネクタイしめて 上司に頭を下げている
頭が痛い お金がない 時間がない また日が暮れる

気楽な幽霊やってるよ あたしはここで同じくらいの
長い時間を味わって 君と一緒に 歳を取った
笑っているよ 歩いているよ 道も分からず 時は流れる

06/11/02(Thu)

Category:執筆

ひきすぎっ!

ctime: 06/11/02(Thu) 1:03
CM流してて気が付いたけど。
「乙女はお姉さまに恋してる」のAice5が歌う主題歌「LOVE POWER」、ベースがうねってる。ムチャクチャうねってる。
http://www.starchild.co.jp/special/otome/release.html

こういうのがあるからアニソンは侮れないんだ、ホントに。
っていうか、ひきすぎっ!

06/09/26(Tue)

Category:執筆

触発

ctime: 06/09/26(Tue) 22:56
漫画家デビューしそうな先輩(本日の過去記事参照)に触発されて執筆を少し進めました。
……結局執筆サボってラテン語をずっとやっていたんです。

数時間で3ページ進んじゃった(1ページ=1200文字)。

「半分の月がのぼる空」を見た影響もあるのかなあ。語り口調ですらすら進む。珍しく文章内の視線も、妙に生き生きとしていたし。
こんな感じ。
---
「いったいいつからあんな靴で暮らしているんですか!? そもそも靴箱さえないなんて、お客様が来たらどうします!?」
 怒鳴りつけるその表情と一緒に、腹にこたえる音が飛び出す。それから周囲をにらみつける。この狭い僕の生活空間を値踏みして、ますます失望の色を募らせ、顔は嫌悪にゆがむ。まるで彼女は、僕の部屋で見るものすべてに敵意を抱いているかのように。それも当然だ、彼女のことは知らないが、僕のこの生活は上流階級のものとはとうてい言えない。母の財布から出た仕送りで食べ、くだらない学校に出かけ、図書館で寝て、授業をかわし、同級生の会話をかいくぐってまた戻ってくる。高校時代の担任が聞いたら眉をひそめるだろう。中学時代の体育教師が聞いたら怒鳴り込むだろう。肉親でさえ、僕に会うたびに嘆くのだ。来年から就職活動なのに、なんて。
---
まあ気まぐれに進めたものだから、完成する頃には結構形も変わっているんだろうけど。
「図書館で寝て、授業をかわし、同級生の会話をかいくぐってまた戻ってくる」なんて言い回しは、なんとなく象徴的。彼にとって大学とはまるで戦場みたいな、無意味な場所なんです。

シャナやヴィルヘルミナや里香をもうちょっと研究してみようかな(ぼそり
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